3月のライオン第5話のあらすじと感想です。
ネタバレを含みますのでまだ見ていない方はご注意下さい。
契約/カッコーの巣の上で
父の友人
「負けました」
盤面を挟んで少年零の前に座るその男は口を開いた。
「竜に飛びつくと思ったのになあ。子供らしくないな、君。詰ましにきやがった」
父の友人だった幸田が来ると例はそわそわ嬉しくなった。友達のいない零にとって周りの子供たちの話は異国の言葉のように理解できないものだった。しかし盤を挟んで語りかけてくるその男の言葉はちゃんと零の中に伝わってきた。大人なのにちゃんと自分に話しかけてくれる、家族以外のただ1人の存在だった。
妹の呼ぶ声
部屋でセーターを繕っていた零に、あかりから電話が入る。急用で保育園のモモを迎えに行けなくなったので、代わりに行ってほしいというお願いだった 。頼まれた零は保育園に行きモモと2人歩いて帰宅する。しかしその途中で、モモが散歩中の犬に追いかけられて転んで擦りむいてしまった。
川本家に戻ってきた零はモモの傷の手当てをする。その時また、心の奥に封じ込めた記憶が蘇ってきた。
細い女の子の腕の無数の傷…。
兄を呼ぶ声が聞こえて、零はあふれる涙を抑えることができなくなっていた。
「零ちゃんすごく気にしてたね。ご飯もちょっとしか食べなかったし。モモいっぱい泣いて困らせたんでしょう?」
モモは、逆に零の方が泣いていたと話した。不思議がるひなた。「るいちゃんにもね…妹がいたんだよ」
あかりがももう抱きしめながら話した。
零の家族の亡くなった理由がここで明かされました。巻き込まれの交通事故という痛ましい事実 。小さな妹までいたようです。
葬儀の席での親類の口性ない人ひそひそ話を聞いているだけでムカムカします。そんな場面に 現れたこうだ。「君は将棋好きか?」この空間から連れ出してほしいあまりに 、嘘の答えを返してしまうのも無理はないと思います。
細かいことですが、あかりの勤めるお店っておばさんのお店だったんですね。あかりと水商売というのが唐突で、 ぴんとこなかったのですがこれで 納得しました。
将棋の家
「いい気になんないで!ゼロのくせに」
将棋の家の子になった零を待っていたのは、同じように棋士を目指す、幸田家の本当の子供たちだった。4つ上の姉で気性の荒い香子と、同い年で弟のおとなしい性格の歩。
幸田は良くも悪くも将棋中心の男だった。彼に愛されるには将棋で強くなるしかなかった。そして、厳しい世界を脱落せずに突破できたのは、養子である零1人だけだった。
零は裁縫針が指に刺さった痛みで我に返る。つけっぱなしのテレビから動物番組が流れていた。
カッコーは他の鳥の巣に卵を産みつけ、かえった雛はそこにあったほかの卵たちを地面に落としてしまう。何も知らない親鳥は自分の子を殺した他人の子にせっせと餌を運び続ける…。
一刻も早く家を出なきゃ。僕がこの家族を食い尽くす前に。
零は義父にもらったセーターを抱きしめながら、高校に進学しなかったときのことを考えていた。
「いっそ鳥だったら、こんな激しい痛みを知らずに済んだのに…」
幸田家の事情が明かされました。お姉さんのほうはちらちら回想で出てきていましたが、弟もいたんですね。やはり棋士になるような頭脳の持ち主だと、普通の父親とはどこか考え方もずれているようです。
零は自分をカッコーに例えていましたが、これは卑下しすぎだと思います。カッコーは義父のセーターに愛情など感じないでしょう。
まとめ
今回は零の過去エピソードが中心だったのでめちゃめちゃ暗い話でした。
孤独な少年が家族を失った悲惨な事故。内弟子として引き取られた先での境遇。どこをとっても明るい話がありません。
印象的だったのは将棋の世界を厳しい山道に例えていた話です。上に登れば登るほど孤高の存在なり周りに人が少なくなる。テレビ番組に出ている明るく楽しい棋士の先生たちも、裏ではもがき苦しんでいるのでしょうか。
関係ありませんが、モモを追いかけ回していたワンちゃんも普通に喋っていました。この世界では動物たちは自由に話せるようです。(人間には聞こえませんが)