3月のライオン第10話「贈られたもの」のあらすじと感想です。
ネタバレを含みますのでまだ見ていない方はご注意下さい。
贈られたもの
親を選んだ少年
クリスマスの迫った12月、零は忘れ物の時計を渡すために川辺で香子と会っていた。零に年末の予定を聞いてくる香子。聞くまでもなく、零の対局スケジュールも対安井戦で今年は終わりだということをしっかり把握していた。
「あ、そうそう。安井さんと言えばついに離婚決まったらしいわね。普段は腰も低くて気も弱いのに、負けると飲んで暴れてギャンブルでしょう。奥さんも今までよく我慢したわよ。かわいそうなのは娘さんよね。怖かったでしょうね、負けるたびに別人になっちゃうお父さんと同じ屋根の下だったわけでしょう」
べったりと張り付くような言葉。この毒を孕んだ声でさえ、聞いていたいと思う自分に零は腹を立てていた。
「子供ってかわいそうよね。だって親を選ぶことができないもの。あ、でもそうね。あなたは違ったっけね。自分で親を選んだんだものね、他人の家の父親をね」
子供の頃に義父幸田からもらったクリスマスプレゼント。姉にはクマのぬいぐるみ、弟にはゲーム機、そして零には美しい将棋の駒が手渡された。棋士を目指す人間ならその駒の持つ価値と父のかける期待とがはっきりわかったはずだ。姉と弟がどれだけ傷ついたかも、零はよくわかっていた。
前回の松永戦と同じように、零にダメージを与えに来る香子。そんな目にあいながらも香子の声が聞きたいと願う零。好き、などという単純な感情ではなさそうですが、そういう気持ちがあるのは間違いなさそうです。
フラッシュバックする回想からすると、2人はただならぬ関係にありそうですが。
通知表
クリスマスは通知表みたいなものだ。この1年間、友達に家族に親にどれだけ愛されたか、どんなふうに愛されていたか?
対局に向かう電車の中で零はそんなことを考えていた。
駅に降り立つと、同じ対局場に向かう安井六段の姿が目に入る。手には娘のものらしいクリスマスプレゼントが握られていた。
早くに親を亡くした零らしい考え方です。親にどんなプレゼントをもらうのか。友達からクリスマスパーティーに誘われるか。こういうことを普段の生活の評価と捉えているわけですね。
数少ないビックチャンスに、何のプレゼントをもらおうかとしか考えていなかった私とはえらい違いです。
VS安井六段
安井との対局が開始された。
序盤は互いに落ち着いた駒組みを進めていく。しかし、昼食休憩のあと安井にミスが出る。勝敗を決するようなミスではなかったが、その瞬間安井から勝負熱が引くのが分かった。
「なんで?まだ道は全て消えたわけじゃないのに。ちょっと待って、なんでどうして。そんな簡単に…頼むから、手放さないでくれよ 」
負けました…。
安井が力なくうなだれる。夕方を前にして決着はあっさりと着いた。安井のため息の中にかすかに酒の匂いが混じっていた。
生きる道
感想戦もそこそこに対局室を足早に去る安井。娘のクリスマスプレゼントが置き去りにされてるのを見つけた零は、安井の後を追った。
「オレんじゃない、知らん」
最初はとぼけていたが、逆ギレしたように零の手からクリスマスプレゼントを奪う安井。恨みがましい視線を零に送って去っていった 。
「あーあ、最後のクリスマスだったのにな」
例の心がざわつく。
安いから離れるように足早に歩を進める、いつしか走り出していた。無人の広場まで一気に駆け抜けると大声で叫びだした。
「うわああああっ、みんなおれのせいかよ!じゃあどうすりゃ良かったんだよ。 ふざけんなよ!弱いのが悪いんじゃんか。弱いから負けんだよ、勉強しろよ!してないのわかんだよ、わかってるけど出来ないって言うんならやめろよ。こっちは全部賭けてんだよ。他には何も持てないくらい将棋ばっかりだよ。酒飲んで逃げてんじゃねーよ。弱い奴には用はねえんだよ !」
一気に叫び終わると、前のめりにバッタリ倒れる。
戦いが始まればどうしても生きる道へと手が伸びてしまう。誰を不幸にしても、どんな世界が待っていても…。
ひょっとすると相手の事情を考えて、零が手加減してしまうのかもと思いましたが、どうやらそんな甘ちょろい世界ではないようです。いざ将棋が始まってしまえば、相手にどんな事情があろうと知ったことではない。そんな考え方がプロの世界なのでしょう。
酒に逃げている安井は、その厳しい世界からすでにこぼれ落ちかかっている存在といえますね。
まとめ
最初から最後まで気が滅入るような暗い話でした。
全開の松永と違って、安井は救いがないですね。現実にこんなプロが居るのでしょうか?負けて家族に当たり散らすような男では未来はないでしょう。零も叫んだことを全部本人にぶつけてやれよ、と思いました。
1週まるまる川本姉妹や二海堂の出番が無いと重たくなりすぎますね、このアニメは。
次回はもう少し救いのある話を期待したいです。